2022年11月7日月曜日

報告: 「汚染水対策を考えるシンポジウム〜このまま海に流すの?!『ALPS処理水』」

 


10月29日に開催されたシンポジウムの動画と資料です。

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10月29日午前、「汚染水対策を考えるシンポジウム〜このまま海に流すの?!『ALPS処理水』」が、いわき市平のいわき市産業創造館ラトブ企画展示ホールで2時間半にわたって開催されました。
 福島第一原発事故によって生まれた「ALPS処理水」の海洋放出について、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という漁業者との約束がなかったかのように、海底トンネルなどの工事が進んでいますが、流されるものは、原発事故により溶けてしまった高線量のデブリに触れた汚染水。放射能の影響は長期間かかって現れてくるもの、それを最小限にするための責任が、今を生きる私たちに問われています。

未来の子どもたちに綺麗な海を手渡したい。かけがえのない海といのちを守るため、自分ごととして「ALPS処理水」の海洋放出について考えようと、これ以上海を汚すな!市民会議が主催して、政府・東京電力と住民によるパネルディスカッションや参加者とのトークセッションが行われ、会場とオンラインで約100名が参加しました。

 パネルディスカッションは、政府・東京電力から、資源エネルギー庁:電力・ガス事業部 原子力発電所事故収束対応室 廃炉・汚染水・処理水対策官の山口雄三さん、東京電力:福島第一廃炉推進カンパニー廃炉コミュニケーションセンター副所長兼リスクコミュニケーターの木元崇宏さん、市民から佐藤智子さん、鈴木薫さん、満田夏花さんがパネリストととして登壇。

 4つのテーマで行われ、ディスカッションでは、ALPSで処理しきれずにどのような物質が残り、いつまで流され続けるのか、その総量も明らかにされていないことが、改めて浮き彫りになりました。今後、64核種以外の放射性物質が確認されることもありうると東電も認め、住民の不安は解消されませんでした。
 ①汚染水対策:広域遮水壁など徹底した止水対策を早急に行うべき 
  東京電力は、「地下水と雨水の問題だが、広域遮水壁は難しい」「建屋カバーや地下貫通口近傍での止水を検討」「凍土遮水壁の耐用年数は何年と言えない。補修して使用する」
  市民の「海洋放出による汚染の拡大について、住民の恐怖を理解しているのか?」という問いに、エネ庁は、「だから、基準に則ってやっている。説明はまだまだだが。」

 ②汚染水処分の方法:環境中に汚染水を流すことは、問題。モルタル固化など、陸上で保管・処分を行うべき
  エネ庁は、「タンク保管は老朽化とスペースが問題」「固化は体積が何倍にもなり、発熱でトリチウムが蒸発」
  市民は「モルタル固化提案の専門家を読んで議論すべき」「なぜ公聴会開かないのか?」と求めた。

 ③海洋放出水の中味:①トリチウムの放出総量は。②ストロンチウム90、ヨウ素129など放出水に含まれる他の放射性核種の総量は。③現在、東電が測定対象としている64核種以外の放射性物質が含まれていないことは、どのように説明するか。
 東京電力は、「トリチウムはタンクに131万トン、780兆ベクレル。現在、全タンクでどれだけかは分かっていない。ALPSにかけて測定後、ストロンチウムとヨウ素129はわかる」「64核種以外は、今後分析して示したい」

 ④漁業者との約束:国・東電は「関係者の理解が得られないままではいかなる処分も行わない」と文書で約束。漁業者が同意していないまま放出のための工事を進めていることは明らかな約束違反では
 エネ庁は、「繰り返し説明し意見交換したい」「漁業者との車座対話進めている」
 市民の「私たちも関係者、立地町長と漁業者だけが関係者ではない」に対し、エネ庁は、「誰が関係者かではなく、理解をうるために説明する」と。

 参加者とのトークセッションでは、「トリチウムの安全性をいうが内部被曝の危険性を評価すべき」「公聴会の開催についての検討結果はどうなったか」「富岡町のヒラメは大丈夫か。リスコミではなく公聴会の開催を」「海側遮水壁の下の透水層から汚染水が海中に出ている、評価はどうなっている」「東電のポータルサイトは説明不足。OBT(有機結合型トリチウム)に対する具体的数値がない。裏付けを示してほしい」「安全なら東京などの大都市でやるべき。事故から11年たってる、なぜ安全な処理方法考えなかったのか。『常磐もの』の魚が台無しになる」「6月の最高裁判決、国が賠償しない。海洋放出、政府が信用できない」「理解を求める、はあるが、合意を得る、と言わない。その理由と今後の対応を聞きたい」などなど、率直なご質問と真摯なご意見が出されました。 (いわき市議 佐藤和良「風のたより」より)