東京電力福島第1原発の放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出計画を巡り、相馬双葉漁協は18日、国や東電との意見交換会を福島県相馬市で開いた。今野智光組合長は冒頭あいさつで「廃炉を進めるために海洋放出は避けて通れないと理解するが、賛成するわけにはいかない」として改めて反対の立場を表明した。出席した漁業関係者からは、科学的安全は理解されても社会的安心が醸成されない限り、新たな風評被害につながるとの懸念の声が相次いだ。19日はいわき市の漁業関係者向けに同様の意見交換会が開かれる。
福島第1原発の廃炉完了まで30~40年かかるとされる中、出席者は「漁師の息子が生活していけるか不安しかない。多くの後継者が安心して漁業に従事できるように国が責任を持って対応すると確約してほしい」と求めた。別の漁業関係者は、政府が風評被害対策や漁業継続支援などに使うために確保した計800億円の基金について「数字が独り歩きし、福島の漁業者がまたお金をもらえると思われる。それも風評になる」と指摘した。「既に風評被害は起きている」などと怒声が飛び、野崎会長が割って入る一幕もあった。
政府が夏ごろとする放出開始に向けた準備は大詰めを迎えており、岸田文雄首相は今月中にも全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長と面会する方針。出席者からは「慌てずに一度立ち止まり、納得を得た上で判断すべき」との意見も出た。政府と東電は2015(平成27)年、県漁連に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分もしない」と約束している。