「ALPS処理汚染水」放出差し止め訴訟。原告側の海渡雄一弁護士に聞く、提訴の狙いと意義
東京電力ホールディングスは8月24日、福島第一原子力発電所にたまっている「ALPS」(多核種除去設備)で処理した水の海洋放出に踏み切った。これに対し、海洋放出に反対する漁業者や一般市民約150人が9月8日、福島地方裁判所に海洋放出の差し止めや国による認可処分の取り消しを求めて提訴した。原告弁護団共同代表の海渡雄一弁護士に、訴訟の意義や見通しについて聞いた。 【写真】海渡雄一弁護士 ――提訴の狙いについて教えて下さい。 原告である漁業者や市民は福島第一原発の事故で大変な被害を被った。そのうえに今回の「ALPS処理汚染水」の海洋放出によって、「二重の被害」を受けることになる。しかも今回の被害は国や東電の故意によるもので、新たな加害行為だ。訴状では「二重の加害による権利侵害は絶対に容認できないとの怒りを持って提訴する」と書いた。
国は、ALPS処理汚染水を薄めて基準値以下にすれば海に流してもいいと主張しているが、間違った考え方だ。そもそも危険性のあるものは環境から隔離しておくことが安全対策の基本だ。そうした間違った行為を何としてでもやめさせたいと考えて、差し止め訴訟に踏み切った。 ■第2次提訴で原告の数は大幅増へ ――提訴までのいきさつは。 私は東電の刑事裁判や株主代表訴訟、福島県飯舘村の集団ADRなどを通じ、福島の方々とたくさんの縁がある。政府が方針を決定した2年ほど前から、海洋放出を何とか止めたいという多くの市民の声を聞いてきた。ただし、直接の被害を受ける漁業者が原告に加わらずに、一般市民だけで裁判を戦い抜くことは困難だろうと内心では考えていた。そこに今回、原告になりたいという漁業者が出てきたことで、提訴の条件が整った。
海洋放出実施前日の8月23日に記者会見をし、9月8日に提訴に踏み切った。第1次提訴の原告は約150人。10月末頃をメドに第2次提訴を行うべく、10月10日を締切日として原告の追加募集をしている。今後、原告の数は大幅に増えると見ている。 ――原告のうち、漁業者の事情はどのようなものでしょうか。 国や東電は、「関係者の理解なしに海洋放出はしない」という福島県漁業協同組合連合会との約束を破った。このことの責任は重い。原告にならなかった漁業者も、心の内では提訴した漁業者を応援していると思う。
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