2023年8月23日
理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める声明
8月22日、政府は関係閣僚等会議にて、ALPS処理汚染水の海洋放出を決定し、24日には放出を開始すると示した。この強引で独裁的な姿勢に言葉を失う。
「関係者の理解なしには如何なる処分もしない」という漁業者との文書約束を反故にし、原発事故被害者である福島県民や国民の声、海でつながる国々の市民たちの声に耳を傾けることなく、立ち止まって議論をすることもなく、何が何でも流そうという姿勢は、著しく民主主義に反する。
岸田首相はこの放出を、「円滑な廃炉と福島の復興のため」と言うが、廃炉がどのような状態をいうのか未だ決っていない。そして漁業者をはじめ、原発事故被害者を再び窮地に追い込む。福島の漁業の決定的な打撃を与えることは確かであるし、消費者も正当な防御行為としての買い控えを行うだろう。購買への迷いや健康被害への不安も発生する。これは風評被害などではなく、実害だ。福島の復興のためになど一つもならず、ただ分断を広げるだけだ。
2018年の経産省エネ庁主催の「説明・公聴会」では、44人中42人がALPS処理汚染水の陸上保管を希望したが反映されず、その後は政府主催の公聴会は開かれていない。市民たちは、県内各地で何度も東電と経産省を招いて話し合いを持ち、東京へも何度も申し入れに出向いた。しかし、一貫して「ご理解を求める」という言葉で、諦めを強いる態度を変えなかった。「一定の理解を得られた」などと、どうしていえるのだろうか。
政府の試算で、当初費用は34億円、88ヶ月の期間とされていた海洋放出だが、現在風評被害対策を含めて約1300億円、30年間と変わっている。これは明らかに国民についた嘘である。提案されている代替案をきちんと検討したのかも疑問である。他にもっと安全な方法があるにも関わらずに、それをやらないのは政府の怠慢と無責任だ。
海は東電のものではない。日本だけのものでもない。過去の核実験で大きな被害を受けた太平洋島しょ国、韓国や中国など、台湾など海外からの大きな批判があり、既に国際問題になっている。更に、海洋放出は、少なくとも30年間続けられる。これは、今生きている世代だけの問題ではない。これは次世代、未来世代につけを回す事であり、未来への暴力と無責任だ。
原発事故で、膨大な量の放射性物質が環境にばらまかれ、今も海に、空に放出されている。それに加えてあえて意図的に環境に放出し、汚染を拡大することは許されない。流そうとしているのは、原発事故により生じた汚染水であり、他の原発が流しているトリチウム水とは決定的に違う。発生責任者であり事故の加害者でもある東京電力が、回収し安全に保管する義務がある。ALPS処理汚染水に含まれる放射性物質は、海水で薄めても放射性物質に変わりなく、その総量は分からないし総量規制もない。
このような問題点を無視し、議論しようともせず、解決しないまま放出を決めたことへ大きな憤りを持つ。
ふるさとの海、日本の海、世界の海を放射能でこれ以上汚してはならない。
あらためて放出に反対し、撤回、中止を求める。
これ以上海を汚すな!市民会議
共同代表 織田千代 佐藤和良
連絡先:福島県いわき市常磐下湯長谷町道下53-2
E-mail:koreumikaigi@gmail.com
PDF版 ←こちらからダウンロードできます